#6 青家物語


祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。

 

物事には始まりがあれば、終わりが必ずあると言うが、案外そんなこともないかもしれない。『平家物語』の冒頭でも同じようなことが書かれているが、令和のこの時代、終わらないものも実は出てきているのではないかと思っている。

みなさんは「ニベアの青缶」をご存じだろうか。あの、薬局はもちろん雑貨屋にも売っている丸い青い缶に入ったクリームである。正式名称はわからないが、ぼくは、この「ニベアの青缶」を愛用している。

 

ニベアの青缶は基本的に終わらない。

中に入っているクリームが一向に無くならないのだ。ぼくは高校卒業と同時に上京し、そのときに初めてニベアの青缶を買った。おそらく何らかの理由で危険だ!ということで禁止されていて山を越えてこなかったのか、地元の長野ではこの青い缶を見たことがなかった。それから今まで十年以上愛用しているが、クリームを使い切った記憶がない。今使っている青缶も一年前くらいに帰省したとき実家には青缶がなかったため購入したものを持ち帰ってきのだが、まだ残っている。いや、残っているというか、終わる気配すらない。あの時のままの青缶がそこにいる。

おそらくニベアの青缶の中では使った分だけクリームが増える、自家培養しているのだ。それは終わらないわけである。

 

ぼくはお肌のケアの九割以上をニベアの青缶に頼り切っている。青缶に入っているクリームの効果・使用時の注意事項などをよく読んだことがないので使い方が合っているかは不明だが、保湿したいとき、唇に潤いがほしいとき、ニキビができてしまったとき、肌を白く見せたいとき、マッサージ用のクリーム、日焼け止めの代わりとして、ぼくはニベアの青缶を塗っている。それらお肌に関する悩みはニベアにかかれば一網打尽なのである。そう、二ベアの青缶は万能のスキンケア商品なのだ。

これだけスキンケア商品が売れていて、今後環境破壊が進み、寒暖差が激しく乾燥や紫外線の影響が強まることを考えれば、お肌のケアが不要になることは考えにくい。そんなときにはニベアの青缶が最適だ。オールインワンですべてを解決なのである。中に入っているクリーム自体が終わらない、しかも万能。この大スキンケア時代はニベア時代と言い換えることができるだろう。

盛者必衰のこの世界において、ニベア時代は終わらない。