#3 悪夢のような質問


「休みの日何してるんですか?」

「好きな音楽とかありますか?」

 

飲み会や意見交換会の際はもちろん、日常の中でも繰り返されるこの質問が、ぼくは苦手だ。この質問をするのも、されるのも、背筋がゾッとするほど苦手なのである。

これは「趣味はなんですか?」を言い換えた、答えやすくした質問で間違いないと思う。会話のほとんどは趣味からの発展であるため、これを聞くのは、ある意味で当たり前だ。人に会って、これを聞いておかないと会話が始まらない。お店に入って、注文もせずにずっと座っている人が居ないのと同じく、ごくごく普通の質問だ。

それはわかっている上で、なぜこの質問が苦手かというと、マウンティングの温床だからである。

 

ぼくは今King Gnuにハマっている。だから、今「好きな音楽とかありますか?」と聞かれれば、「あ、King Gnuとか聞きますね。」と答える。その場合返ってくるのは大体三パターンのマウンティングワードだ。

一つ目は「え!じゃあ日産とか行きました?」という、ライブ現地マウンティングだ。「好きならライブとか行くよね?」という、謎の勢力からの悪夢の返しである。ぼくはユーチューブを見るだけのKing Gnu無課金勢である。現地に行くほど好きではない。もちろん家の近くでやってくれて、かつ、チケットをくれるなら行く。でもチケット争奪戦を勝ち抜き、暑い中遠くまで出向くほどの熱はない。

二つ目は「じゃあ、井口さんのラジオ聞いてました?」という、メンバー個人活動マウンティングだ。「King Gnu好きなら当然メンバーのことも知ってるよね?ね⁉」という、これまた謎の勢力からの悪夢の返しである。ぼくはユーチューブで『白日』と『逆夢』だけを聞いているKing Gnu特定曲推し勢であるため、メンバー個々の活動は何一つ追っていない。追う気もないし、それを強制されるのであればKing Gnu特定曲推し勢もやめようと思う。

三つ目は「あー、人気だよね。」という、お前の趣味は個性がないマウンティングだ。「なーんだ、ミーハーか。もっと趣味にオリジナリティ出してこいよ。」と言わんばかりの自分の趣味は個性的で確立してると思っている謎の勢力からの悪夢の返しである。いや、お前が聞いたんだろ!だいたいオリジナリティとか個性のある回答したらそれはそれで、知らねーよ!とか言ってくるだろ!と言いたくなる。

もし、この悪夢の質問をしてしまった場合、相手の回答に対しての返し方の正解は「へ~、聞いたことあります。どんなのでしたっけ?」これである。これは明らかに上から目線ではない上に、興味も多少はありそうだからだ。

 

何事もそうだが、物事は最初が肝心だ。会話の最初から悪夢のような時間が流れないよう、お互いに気をつけたい。誰かを、知らず知らずのうちに傷つけてしまわないように。

こんなことを考えているから、ぼくには友だちが少ない。